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元ハンセン病患者の心の傷──ホテルを指弾するだけでは癒えない [ハンセン病]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2013年11月3日)からの転載です


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元ハンセン病患者の心の傷──ホテルを指弾するだけでは癒えない
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 先月下旬、天皇陛下は皇后陛下を伴い、熊本県にある国立ハンセン病療養所を御訪問になり、園内の納骨堂に花を手向けられ、入所者と懇談されました。

 ハンセン病問題について深い関心を示される陛下は、皇太子時代から全国各地にある療養所を訪問になり、差別や偏見に苦しむ入所者との交流を続けてこられました。

 あらゆる民に御仁慈を示されるのは、陛下のみならず、皇室の伝統というべきものです。

 というわけで、10年前に宗教専門紙に書いた拙文を転載します。当時は、同じ熊本県内のホテルが元患者の宿泊を拒否したことが社会的な大ニュースになっていました。

 なお、同紙の編集方針に従い、記事は歴史的仮名遣いで書かれています。若干の加筆修正があります。



 熊本県阿蘇・黒川温泉の女性専用ホテルが元ハンセン病患者の宿泊を拒否した問題は、熊本地方法務局による支配人らの告発にまで発展した。


▽抜きがたい差別の意識を浮き彫りに

 事件を振り返ると、発端は、熊本県が県内療養所に入所する元患者十八人に一泊してもらふ予定で、九月にホテルを予約。しかし十一月になって、ホテル側が「宿泊を遠慮して欲しい」と県に申し入れた。

 県は感染の恐れがないことなどを文書でも説明したが、ホテル側は固辞。「社会から差別が消え去ったとは思へず、客商売だから断った。判断が間違ってゐたとは思はない」とマスコミに語り、その後、ホテルに抗議が殺到、地元旅館組合の除名決定などを受けるにおよんで、「無知と認識不足で不愉快な思ひをさせた」と元患者らに謝罪した、と伝へられる。

 ホテル側の無知と不手際は明らかだが、ある意味では正直な対応で、事件は日本社会にはびこる抜きがたい差別の実態を浮き彫りにした。人の差別の意識はほとんど根元的といへるほど根深く、差別された者の恨みの感情は言語に絶するほど辛い。

 今回は差別・偏見による宿泊拒否をめぐって法務当局が初めて刑事告発する事態となり、ホテルに批判が集中してゐるが、一業者を一方的に指弾するだけでは根本的な解決にはなり得まい。

 実際、旅館業法(昭和二十三年制定)は第五条で「営業者は左の場合を除いて、宿泊を拒んではならない」として、「一、宿泊者が伝染病の疾病にかかってゐると明らかに認められるとき」を掲げてゐる。

 もちろん黒川の場合は「元患者」であり、「ハンセン病やエイズなどは『伝染病』には含まれない」(県担当者)のだが、旅館関係者によると、法律の運用などについて「これまで行政の指導を受けたことはない」。県は差別撤廃の努力を重ねてきたが、決して完璧ではない。


▽国の対策の誤りは二年前確定したが

 ハンセン病はかつては「癩(らい)」とよばれ、「仏罰」「遺伝病」「不治の病」と考へられた。

 ノルウェーの医師ハンセンによって「らい菌」が発見され、感染症であることが分かったのは一八七三(明治七)年、国際学会で正式に認められたのはさらに二十数年後であった。

 感染力も弱く、有効な薬剤療法も開発されたが、日本では「強い伝染力がある」などとの間違った宣伝や強制隔離政策が採られ、かへって誤解や偏見を深め、患者たちを苦しめてきた。

 ハンセン病を特別視する「らい予防法」が廃止されたのは平成八年のことであった。

 同法廃止は予防法制度の根本的変革ともいはれたが、患者の苦悩はさらに続いた。

 五年前に提訴された「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」で熊本地裁は一昨年、国のハンセン病対策を違憲とする判決を下し、その後、国が控訴を見送り、判決が確定した。

 国の対策の誤りが法的に定まったのは日本の歴史にとって画期的であったが、そのことで長年、現実に差別に苦しんできた元患者の心の傷は癒されたのだらうか。法制度の改革に依存して、社会に根深く巣くふ差別意識が容易に解消されるはずもなからう。


▽患者らに示された皇室の深き御仁慈

 今度の事件は奇しくも天皇・皇后両陛下の奄美行幸啓、名瀬市内の国立療養所御訪問の直後に起きた。

 三十五年ぶりに園を再訪された両陛下には園内納骨堂に花束を捧げた後、入所してゐる元患者の手を握られ、「またお会ひしましたね」「お元気ですか」とお声をかけられた。

 この病に苦しむ人々に御仁慈を示されるのはわが皇室の伝統でもある。天平の御代、光明皇后がハンセン病患者の全身の膿を親しく口で吸ひ取り給うたことは半ば伝説ともなり、語り継がれてきた。貞明皇后も同様に深い御仁慈を示された。

 天皇はつねに「国平らかに、民安らかに」との公正無私の祈りを捧げられる。その大御心を国民はどこまで深く理解し、わが心とし得るのか。ホテルを指弾し、政府を批判するだけでは済まないのではないか。


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ハンセン病国家賠償請求訴訟の気がかり [ハンセン病]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年1月17日水曜日)からの転載です

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ハンセン病国家賠償請求訴訟の気がかり
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 ハンセン病に対する差別ほど気の重くなる話題はありません。けれども、歴史の事実を見極めようとすると、どうしても見過ごせないことがあります。

 北朝鮮系のメディアに、在日の元患者なのでしょうか、日本でなぜ「らい予防法」の廃止が遅れたのか、在日の発症率が高かったのはなぜか、そして日本のファシズムについて追及していくことをつよく表明している、という内容の記事が載っています。

 どうやら差別の不当を法廷で突きつける国家賠償請求訴訟が全国的な拡大を見せようとしているようです。

 元患者の人々はハンセン病と在日という二重の差別に苦しんできたといわれます。理不尽な差別は絶対にあってはならないことですが、日本の差別批判が日本の歴史批判を目的に行われるとなると、疑念を感じずにはいられません。そして、そのような政治批判は元患者を三重に苦しめる結果になるのではないかと恐れます。日本が朝鮮人患者に手厚く対応していたことを示す公的な資料があるからです。

 それは法務研修所がまとめた『在日朝鮮人処遇の推移と現状』(昭和30年)という報告書です。在日朝鮮人問題に関して政府関係資料をもとに多面的に考察した随一のもので、いゆわる朝鮮人の「強制連行」が事実からいかにかけ離れているかを浮き彫りにしていますが、同様に、朝鮮人患者への処遇についても追及されるべき事実は見当たらないことが分かります。

 報告書によれば、元来、患者の多い地域だったようです。昭和元年の患者数は5321名、13年は14000余名。在朝鮮朝鮮人の数は昭和5年が2000万人、17年が2500万人ですから、人口増加以上に患者数が増えています。

 5000人を収容する官立の小鹿島更生園(全羅南道)は充実した施設で、「金剛山、水豊ダムとともに世界一と称せられた」と報告書は書いています。

 けれども戦後になって、日本統治を離れたあと、韓国ではさらに患者が増え、24年には約45000人に推定されていました。韓国政府は療養園の増設など対策をとってはいるものの、国家予算が不十分でした。

 その結果、患者は施設の整った日本に流れました。30年当時、在日朝鮮人に占める療養所収容者の割合は0.11パーセントで、日本人患者の総人口に占める割合の0.011パーセントの十倍を示しました。それでも、韓国の総人口に対する推定患者数2.1パーセントよりははるかに少なかったのです。

 密入国してくる朝鮮人患者はあとを絶たず、しかも日本での潜伏生活は衛生上、劣悪で、その結果、幼児や家族への感染が起きたといわれます。

 一方で、GHQは戦後の朝鮮人引き揚げ時に、患者については引き揚げを禁止したのでした。また、収容されていた朝鮮人の児童については引取先がほとんどなく、当事者の悩みとされている、と報告書は書いています。

 この報告書を見るかぎり、不当な差別追及はまだしも、日本のファシズム批判がまったく当たらないどころか、むしろ日本が戦前も戦後も朝鮮人患者に対して手厚い対応をとってきたことが分かります。これでも日本は国家賠償を請求されなければならないのでしょうか。

 そもそも、なぜ患者の密入国があとを絶たなかったのか。

 韓国文化にくわしい友人は儒教文化の影響を指摘します。あらまほしき姿を正統とし、異端を極端に毛嫌いする思想が、差別を生んでいるというのです。患者の仕草をあざ笑う「病気踊り」は伝統芸能として継承されてさえいます。韓国ではいまなお患者は迫害されているといいます。

 これに対して日本では、病に苦しむ人々にもっとも深い仁慈を示してこられたのが皇室です。天平の時代、光明皇后が患者の患部から膿を親しく吸い取られた、という伝説さえ語りつがれてきました。

 貞明皇后が施設の収容者に慈しみを示されたことは記憶に新しいし、つい最近も、熊本でおきた患者に対するホテル宿泊拒否事件と相前後して、奄美の療養所を35年ぶりに再訪された両陛下は、園内の納骨堂に花を手向けたあと、患者の手を取り、「またお会いしましたね」「お元気ですか」とお声をかけられたのでした。

 差別は絶対にあってはなりません。しかし在日の患者の訴えが正当かどうかはまた別です。十分に歴史を検証しないまま、被差別を政治的な日本批判のいわば道具とすることは、みずからをさらに苦しめることになりませんか。

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