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世界中に3000万本の木を植えた男 [植林]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(2006年4月27日)からの転載です。

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靖國神社批判が収まらない──官僚、メディア、政治家の誤解と曲解◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 横浜国立大学名誉教授で国際生態学センター研究所長の宮脇昭先生が、『苗木3000万本 いのちの森を生む』(日本放送出版協会、1200円+税)という本をお書きになりました。

 おととしNHKの「土曜インタビュー」に出演され、「日本一多くの木を植えた男」というタイトルでお話になったのが、やがて放送テキストになり、大反響を呼んだことから、大幅に加筆して一冊にまとめ直されたとのことです。

 縄文時代の日本列島は99パーセントまでが照葉樹林と呼ばれる深い緑に覆われていたといわれます。しかし弥生時代に、水田稲作が導入され、水田農耕がまたたく間に北上すると、生態系に大きな変革がもたらされました。

 しかし宮脇先生によると、深刻な自然破壊にはいたりませんでした。開発された水田は国土の1割に満たず、日本列島の7割は依然として森に包まれています。それは私たちの祖先が自然を畏怖する観念を持ち、弱い自然を守り、共存を図ってきたからだ、先生は考えています(『緑の証言』)。

 けれども日本列島の自然の照葉樹林はいまや0.1パーセントにも満たないといわれます。明治以降、近代思想や近代科学の導入で、日本人の心は自然から離れてしまいました。

 さらに戦後の経済至上主義は、日本の自然を画一的な空間に変えました。広葉樹は伐採されて、人間にとって利用価値の高い針葉樹の人工林に一律に置き換えられてしまいました。

 宮脇先生は、「経済学の時間は余りに短い」。経済の刹那的打算が・経済学が扱う時間の物差しでは計算不可能な生態系の生態系の破壊をもたらした、と指摘しています。

 先生は、興味深い自然の仕組みについて語っています。自然は多様性の固まりで、絶えず変化しながらダイナミックな安定性を維持している。多様性こそが安定した姿であり、もっとも強い自然の条件だ、というのです。災害時には高木や低木が雑多に混じり合う天然の雑木林が強さを発揮します。

 逆に画一的な人工林は台風や集中豪雨にきわめてもろく、つねに人手を加えないと荒れてしまう。多様性を失い、画一化するとき、自然は生命力や抵抗力を低下されてしまう、とおっしゃるのです。

 宮脇先生のすごいところは、机上の学問ではなく、「人間が消えても森は育つ。しかし森が消えれば人間は生きていけない。緑の植物は唯一の生産者であり、森は生物の生存基盤である」と訴えつつ、自然の多様性を回復する植林活動を世界中で実践されてきたことでしょう。そして一般市民といっしょに植えた木が3000万本を超えたのです。

 今度のご本には図版や写真も数多く掲載され、情熱あふれる先生の実践活動が目に見えるかのようです。

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