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『コシヒカリ』を超えるイネがない [イネ]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」からの転載です。


 今朝の朝日新聞が一面トップにじつに面白い記事を掲載しています。「新潟コシヒカリ」に「銘柄騒動」が起きているというのです。
 http://www.asahi.com/life/update/0515/002.html
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 記事によると、新潟では昨年産米から「新潟コシヒカリ」をいっせいに新しい品種「コシヒカリBL」に切り替えたのですが、消費者から「味が違う」という声が出始めたのだそうです。

 もともと「コシヒカリ」という品種は、福井の農業試験場で、昭和19年に農林22号と農林1号との交配によって生まれました。品種登録は昭和31年で、登録番号はキリ番の100番、「越国に光り輝く」という願いをこめて「コシヒカリ」と命名されたといわれます。

 稲の品種は新しく品種として認められた元種(もとだね)が何百キロか冷蔵保存され、そこから毎年、少しずつ取り分けられ、何段階かを経て、種籾がつくられ、その種籾をつかって各農家がお米を生産するという体制になっています。

 コシヒカリの場合は、冷蔵庫のない時代の品種ですから、福井県から分かたれた元種から、各県で昔ながらの自家受粉によって種籾の生産がなされ、その後、各県の元種が冷蔵保存されるようになり、その元種も何世代目かに切り替わっているようです。

 新潟の「コシヒカリBL」は、朝日の記事によると、病害に弱い「コシヒカリ」の欠点を克服するため15年かけて開発されたようです。産地偽装に対する切り札とも伝えられています。

「BL」というのは「Blast resistance Line」の略で、「いもち病に強い系統」という意味のようです。「コシヒカリ」をつかって、いもち病に強い新しい品種を新潟県が総力をつかって育成したということです。

 簡単にいうと、新しい品種なのですが、なぜ「コシヒカリ」の名前が認められたのでしょう。朝日の記事では、農水省が「特徴や味が変わらないという県の報告と、見た目にも区別しがたいことから判断」し、「コシヒカリ」の表示が認められた、と書いています。

 けれども「コシヒカリ」の形質を引き継ぎ、性質の優れた新品種なら山ほどありますが、新潟の「コシヒカリBL」以外、「コシヒカリ」の名前を踏襲したものはありません。そのため、稲作の専門家は「なぜ農水省は認めたのか」と首をひねっています。そして、「新潟コシヒカリ」の将来について、こう語ります。

 ──結局、「コシヒカリ」から出た新品種は「コシヒカリ」というブランドを超えられないということだ。「新潟コシヒカリ」のブランドをつくり、そのブランドで生き残りを図ろうとしている新潟の稲作がその現実を認めてしまった。しかし、消費者が「味が違う」と反発しているとすれば、「新潟コシヒカリ」のブランドの将来はどうなるのか。

 倒れやすく、病害虫にも弱いコシヒカリは生産者にとってはつくりづらい品種ですが、「美味しくて売れる」ことから、作付面積は圧倒的で、コシヒカリ一辺倒といわれるほどです。消費者もコシヒカリといえば「美味しい」と思い込んでいます。コシヒカリが米の代名詞になっています。

 しかしコシヒカリが独り勝ちしているような時代はいつまでもつづくとは限りません。たとえば、総合地球学研究所(京都)の佐藤洋一郎教授は、次のような警鐘を鳴らしています。

 ──品種改良の現場にいる人たちまでがコシヒカリ以外の稲を知らない。コシヒカリが現れてからすでに50年、あと50年後には確実に消えている。それなのに、いまだにコシヒカリが品種改良の物差しで、これを越えるものがイメージできない。コシヒカリを超える稲は生まれてこない。

 佐藤さんは「キラリと光る新品種」が求められていると語っています。

タグ:コシヒカリ
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