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専門家が見当たらない歴史教科書執筆者 [歴史教科書問題]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」(平成19年3月31日土曜日)からの転載です

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専門家が見当たらない歴史教科書執筆者
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 憂鬱な季節がやってきました。教科書検定のニュースがまた話題になっています。メディアは高校歴史教科書(申請本)に関して、たとえば、沖縄戦集団自決について

「軍が強制した」

 とする記述の削除を文科省が求めていることや、逆に、「諸説への配慮」を求める検定意見を受けていわゆる南京虐殺の犠牲者数「30万人」説を新たに書き加えている教科書もあること、などが伝えられています。

 こうした歴史教科書をどんな人たちが書いているのか、3年ほど前に調べたことがあります。

 ちょうど大学史入試センター試験の世界史の科目で、

「第二次大戦中に朝鮮人の強制連行があった

 を正解とする出題があったときでした。日本の外務省は「強制連行」説を否定しています。ところが、

「史実かどうか疑われているのに」

 という批判が寄せられると、センターは

「教科書に載っている」

 と強弁したし、文科省は

「検定は一般的な学術状況を踏まえている」

 と正当化しました。それならどんな人たちが高校の歴史教科書を書いているんだろうと興味を持ったのでした。

「70万人におよぶ朝鮮人が日本に強制連行され」

 と書いていたのはJ出版の教科書でした。執筆者はY大学のT名誉教授ほか9人。T名誉教授は中国史の研究家ですが、国会図書館の書誌検索で見るかぎり数冊の共著以外に著書はありません。T大学のK教授は二十世紀の戦争を再検討する著書などを左派系出版社から数多く出版しています。A大学のM助教授は中国人民解放軍史の研究者でした。朝鮮の近代史に詳しそうな人は見当たりません

 D出版の教科書は

「朝鮮の人々は太平洋戦争が激化すると、日本の炭坑や軍需工場などに強制連行され」

 と記述していました。この教科書の特徴は著者のほとんどが西日本のH大学の教授・名誉教授で占められていることですが、中国史の研究者は二人いるものの、朝鮮史の研究者はいませんでした。

 もっともシェアの大きいY出版の教科書は

「戦争中の日本の労働力不足を補うため、朝鮮では労働者の強制連行も行われ」

 と書いていました。代表執筆者にはT大学のY教授(東洋史)もいました。そのほか日本を代表する歴史家が執筆陣のなかに名前を連ねていましたが、すでに鬼籍の人となり、新しい版では顔ぶれが一変しました。

 H出版の教科書は

「日本軍による強制連行や強制労働が朝鮮半島や中国大陸で多くの民衆を巻き込んだ」

 と書いていました。執筆者代表3人のなかにはいわゆる南京虐殺を政治的に告発してきた人物も含まれていました。3人の大学教授以外、ほとんどの著者が高校教諭で占められているのは、ほかには見られないこの教科書だけの特徴でした。

 韓国・朝鮮問題の専門家にこのような現状について聞いたところ、「強制連行」が事実でないことはおおかたの朝鮮史研究者はすでに知っているのだそうです。けれども、畑違いの左派系学者などで固まった教科書編纂の現場にはそうした学問的な常識は通じないというのです。その結果、事実でない「強制連行」が教科書に載り、センター試験に出題までされたのでした。

 他方、文科省は事なかれ主義で、チェックが行き届かないというのが実態だともいいます。

 たとえば、これは中学校の英語の教科書ですが、中学生3年生のほぼ4人に1人が使用している出版社S社の教科書には、植民地の朝鮮で「日本語が強制され、母語の使用がやめさせられた」というような記述がつい最近まで継続的に行われていました。

 日本統治下の朝鮮ではラジオの第二放送では朝鮮語が用いられていたし、朝鮮総督府の機関紙は終戦まで漢字ハングル混じりで刊行されていましたから、朝鮮語使用禁止は明らかに誤りですが、この教科書はじつに25年前の初版から同様の記述をしてきました。

 つまり朝鮮史の専門家が関わらない教科書の執筆の問題もさることながら、文科省の検定能力にも限界があるということになります。「ノーチェック」という厳しい声すら聞かれるほどです。

 となると、どんな検定が行われたか、を伝えるメディアの報道がいかに浅薄きわまりないものであるかが分かります。

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