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2 靖国神社とそのあるべき姿 (葦津泰国) 第1回 終戦記念日の靖国神社境内 [靖國神社]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です

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2 靖国神社とそのあるべき姿 (葦津泰国)
第1回 終戦記念日の靖国神社境内
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[1]60年以上つづく参拝者の黙祷

 平成21年8月15日、終戦記念日の靖国神社の社頭である。

 この日には毎年、何万人もの人たちが靖国神社に参拝し、先の大戦(正式名称は大東亜戦争)の戦没英霊の霊(みたま)に向かって頭を下げ、正午の時報に合わせ1分間の黙祷を捧げる。

 この年もあの終戦の日を思い出させる暑い夏の日であった。空には入道雲が湧きあがる真夏の一日、境内は桜や銀杏などの木立に囲まれているとはいえ、風が止まると蒸し暑さはかなりのものだった。それでも、例年通りの老若男女の参拝者で広い境内は埋め尽くされた。

 いまから64年前の昭和20年のこの日この時、昭和天皇はラジオ放送によって『終戦の詔勅』を発せられた。日本(大日本帝国政府)は対戦相手の米国・英国・中華民国はじめ連合国に対し、彼らの発したポツダム宣言を受けいれて降伏をする決断をした、と宣言された。

 それ以来、いつしか、この日が来ると行われる靖国神社ご社頭での参拝者の黙祷は、誰から指示をされたものでも、決められたものでもない。だが、60年以上にわたって、世代が代わり、人が代わって、参拝者も代わっても、毎年続けられて国民の中に、もっとも大切な慰霊の行事として継続されて、現在に及んでいる。


[2]だれが教えたわけでもないのに

 日本には、この日以外に国民がそろって頭を垂れて黙祷することはほとんどない。終戦の日、全国各地の職場や集会で、この時間を選んで黙祷は行われるが、ここには誰に命ぜられることもなく、数万の人々が黙祷を捧げるために集まってくる。

 境内にあるスピーカーが正午の時報を鳴らすと、雑踏で騒がしかった境内はすべての行事が中断され、参拝者の動きも止まる。あたりは一瞬、静寂の空気に包まれ、風に揺れる木立の葉の音と蝉の声がいちだんと高く聞こえる。

 世間にはわざわざ、「国民の祝日」として法律によって定められている国の記念日も多い。だが、この日は「国民の祝日法」を探しても見当たらない一日である。しかも国会の決議でわざわざ定められている祝日法での国民の祝日でさえ、現代の日本の一般国民にとってはその趣旨はあまり理解されず、いつしか単なる「労働休養日」となってしまっているのが現状である。

 祝日にはその日を祝日の設けられた趣旨にかんがみ、その祝日を設けた意味に深く思いをいたし、それを記念した特別の行事などが行われることが望ましいとされているのだが、そんな国民の祝日も、大半はカレンダーに赤い日の丸が印刷されているだけで、国民は、さしたる意義も考えずに、単なる「仕事のない日」程度にしか意識していないのが現実である。

 もちろん、学校の義務教育などでは、祝日の意味ぐらいは教えるのだろうが、この日の靖国神社の黙祷などは教えない。国や共同社会を大切にし、国旗国歌の大切にしなければならない意味さえも無視して、その無教養で世界で恥をかく国民を作り出している我が国公立学校の義務教育なのだから。


[3]もっとも黙祷にふさわしい場所

 だが、終戦記念日の靖国神社の黙祷は、カレンダーの日付の欄に日の丸も喪章も付されてはいないが、自主的に全国から集まってきた国民によって、毎年欠かさず何万人の人々が加わって行われている。

 この日のこの時刻には、靖国神社からわずかに靖国通り一つを隔てた反対側の日本武道館で、政府主催の戦没者追悼式が開かれている。これは政府によって主催される公式な大東亜戦争犠牲者への追悼行事とされている。会場には全国から戦没者の遺族らが招かれ、各省庁の代表や国会議員も参列して、天皇陛下も臨席される。

 それにもかかわらず、ここ靖国神社には、何万という国民が英霊を追悼するために集まってくる。黙祷をする国民の意識の中には、いま、天皇陛下が、国の追悼式で戦没者に黙とうをささげておられるという意識はもちろんある。

 だが、黙祷をするにしても、その式場の前に集まって黙祷するよりも、ほかの施設で頭を下げるよりも、靖国神社の戦没英霊の祀られる施設の前が、もっともふさわしいところと彼らは信じている。

 国民意識はこんな形で固まっている。政府の戦没者追悼式に全国から招待される参加者たちも、式典の前後には、ほとんどの人が靖国神社に参拝をする。


[4]「無宗教」形式を創出した知識人

 国民の素直な感情は大事にしなければならない。国の行っている行事はどこか心のこもった戦没者への追悼式典になりきれていないという思いが、人々の間には明白に感じられる。

 国の戦没者追悼式は、第2回目(昭和39年)だけは靖国神社の外苑で開かれたが、その後はわざわざ靖国神社を避けているように見える。

 これは日本の国の特徴だが、日本には占領中ではなく、昭和40年代ころから、マスコミ、そして政府の動きには、靖国神社を避けようとする空気が強まってきている。議員やそれを支える官僚たちが、戦後の悲痛な思いを理解しない層に徐々に変わってきたからなのだろうか?

 戦争が終わるまでは、国自身が戦没英霊を祭神として決定して靖国神社に祀り、率先して儀式を行い、宣伝にも力を入れてきたのにもかかわらず、戦後経済が一落ち着きをしたころから、靖国神社をわざわざ避けて、追悼式の儀式まで、靖国神社での祭りの方式とはまったく違う「無宗教方式」という国が作り出した官僚臭い「宗教儀式」を国民に押し付け、式の雰囲気から靖国神社の色彩をなるべく感じさせないように変化させてきた。

 英霊の遺族たちが戦後20年を経て急速に減少を始めたのを見て、官僚たちに靖国神社を厄介な戦前からのお荷物として露骨に避けようとする者が増加して、空気が変わってきたのではないか? 当時この問題などを取材していた私の感ずる空気だった。

 役人たちが、国民の中に長い間定着してきていた「柏手を打って頭を下げる」参拝方式をわざわざ避け、菊の花を供えて頭を下げる新方式を作り出したその背後には、以下のような考えが見え隠れしている。

〈靖国神社はアメリカなど占領した西欧人が断定するように、宗教的な施設だった。だが、国は戦後に作られた新憲法によって、日本より文明的な西欧に見習って、宗教的な問題にはかかわらないことに決まった。だから戦没者追悼式も靖国神社の外に場所を移し、靖国神社の祭りとは関係のない、日本伝統の雰囲気を感じさせにくい、政府指定の祭礼方式でやるのが、西欧に認められる日本の近代化なのだ〉

 考えてみれば、愚かで雑駁(ざっぱく)な論理ではある。だが、そんな気風は日本人の中に、とくに学者とされる人や官僚の中に濃厚にある。文明開化の鹿鳴館思想以来の日本の新興知識人の気風なのだろうか?


[5]政府は靖国神社を避けている

 それはともかく、宗教的儀式とは何をさすのか?

 西欧もふくめて、一般に広く考えられているそれは、生きている人間に対してではなく、物理的に人間の見る、聞く、触るなど、五感では関知し得ないもの(とくに人間の創造した神や信仰対象、霊魂など)に存在するかのように、敬意を表する行為の形そのものを、最初から宗教的(宗教そのものではない)儀式と呼ぶことと受け取られている。

 そうなると、墓標のような柱に「戦没者の霊」とわざわざ記して、そこに榊(さかき)の玉串ではなく供花という特別の拝礼方式でも、それを指定して儀式をすること自体が、「無宗教儀式」という名をつけてはいても、立派な政府が作り出した宗教的儀式ということになる。

 しかも日本人の大半は神社仏閣に参り、また多くの人が教会に訪れる。それらの人にはこの政府の儀式の指定そのものが、靖国神社への参拝以上の違和感を覚えさせるのは当然である。

 私は単に全国の神社や、これとは少し違う靖国神社に儀礼的に頭を下げるだけではなく、みずから霊魂の存在を確信し、神や祖先の御霊を心から大切に思う神道人の一人である。

 そんな立場からこの追悼式をみると、この8月15日という日は、政府が靖国神社およびそこに参拝する多くの人たちに対して、ことさらに精神的な刺戟を与えることに執心している日であるように、思えてならない。

 首相はこの日、戦没者追悼式をみずから招集し、実施して、靖国神社の拝礼を否定する宗教的儀式を執行し、引き取り手のわからない戦没兵士の遺骨をとむらう国の施設である東京九段の千鳥ケ淵戦没者墓苑に参拝をした。

 どちらの行事も国の首長の行う終戦記念日の行事としては意義あるものとは思う。真正面から見れば、終戦の日に当たって、戦争に倒れた人々に敬意を表し、いまの穏やかな状態が、彼らの苦しみの上にあることを生きているものの代表として感謝しているのだろう。

 けれども、常日頃、靖国神社の問題解決など、国みずからが生み出した過去の歪みの矯正には消極的で逃げ腰の政府の姿勢は、こんな首相の行動は、ただ靖国神社を避けるがために、日程を毎年組むのではないかとさえ思われてならない。(つづく)


☆斎藤吉久注 葦津様のご了解を得て、「私の『視角』」〈http://blog.goo.ne.jp/ashizujimusyo〉から転載させていただきました。適宜、若干の編集を加えてあります。

タグ:靖国神社
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