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「愛媛玉串料訴訟最高裁判決」予測報道から1年──共同通信の前身は「大本営発表」を垂れ流した同盟通信 [靖國問題]


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「愛媛玉串料訴訟最高裁判決」予測報道から1年
──共同通信の前身は「大本営発表」を垂れ流した同盟通信
(「神社新報」平成10年2月9日号)
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 ジャーナリズムの貧困を見せつけたのは、昨年(平成9年)2月9日だ。

 共同通信の配信を受ける地方紙と朝日新聞は、「愛媛玉ぐし料訴訟 公費支出 違憲判断へ 最高裁大法廷 政教分離に反す」(「愛媛新聞」)というような見出しの記事を掲載した。

 最高裁の判決が事前報道されたのは前代未聞で、しかも記事が合議内容に踏み込んでいたため、秘密漏洩疑惑にまで発展した。


▢1 用意周到な「スクープ」


 共同通信の配信はメインの記事のほかに、判例傾向をまとめたサイド記事、写真入りの原告の「喜びの声」、用語解説、政教関係裁判をまとめた一覧表など、手厚い。

 一方、朝日新聞はメインの記事のみで、原告の表情は大阪版にも西部版(福岡)にも載っていない。

 共同通信の原告・被告双方に対する取材は、締切時間ぎりぎりの、8日土曜日の午後9時以降に行われたようだ。

 取材先には迷惑なことだが、テーマとは関係のないような雑談を交わしながら、追随する他社がいないかを確認するため、取材記者は締切時間の夜半まで、関係者の自宅に居座り続けたらしい。

 記事が掲載された9日は日曜日で、翌日の月曜日は「新聞休刊日」だから、配信後に他社が追いかけたとしても掲載は早くて月曜日の夕刊になる。

 共同は「完全単独スクープ」を用意周到に狙ったのであろう。

 朝日は途中から猛追したのだろうが、共同のような手厚い記事を書くには、与えられた時間は短すぎた。

 都市部に配達される遅版には間に合ったものの、夕刊のない早版地帯では2日遅れの11日の朝刊に掲載された。

 朝日はスクープ競争に「完敗」した。


▢2 編集者の見識が疑われる


 共同社会部はさぞ勝利の美酒に酔い痴れたことだろう。けれども判決予測にどれほどの意味があるのだろうか?

 当日になれば、すべては明らかになる。スクープの意味を取り違えていないか?

 似たような事例に選挙報道がある。投票が終わり開票が始まると、メディアは開票速報に血道を上げる。莫大な予算を注ぎ込み、スーパーコンピュータを駆使して、予想合戦を展開する。

 政治学者の岡野加穂留は気の早いメディアに予想を聞かれると、

「即日開票なら投票日の夜、翌日開票なら翌日に分かる」と答えるという(『知的野蛮人のすすめ』)。

 選挙はゲームではない。議論すべきは政策である。議席配分の「予想」の当たり外れを競って何の意味があるのか。

 知り得たことを記事に書くのは新聞記者のどうしようもないサガだが、採否を決断するのは編集者の見識である。

 その見識が感じられない。


▢3 みずからの「戦争責任」は問わず


 共同の編集責任者は、予測通りなら最高裁では初の違憲判断になる、判決は「従軍慰安婦」「南京虐殺」などに関わる「戦争責任論」にも通じる、アジアの国々も注目している、と考えたらしい。

 いうまでもなく、靖国神社は「軍国主義・朝国家主義」の中心施設だったという理解である。

 それならば、判決の予想記事を配信するより、判決の意味を考える記事を配信すべきではないのか。その後、そうした企画は立てられたのだろうか?

 共同通信は全国61社の新聞社とNHKが加盟する社団法人で、配信記事は加盟紙だけでも2500万部に掲載される。朝日、毎日、読売の全国紙3紙が束になってもかなわないほど、強力な媒体力を持つ。

 前身の同盟通信は5500名の人員を擁する、当時、世界最大の国策通信社で、「大本営発表」は同盟を通じて、新聞、ラジオに流された。

 配線後、自発的に解散したが、実態は共同、時事通信への分離・分割で、通信網も人員も温存された。

 一昨年(平成8年)に刊行された『共同通信社50年史』の「第4部 前史」は同盟について、32ページにわたって記述しているが、「戦争責任」についての言及はない。

「第1部 概観」に、役員が自発的に総退陣したため、同盟の戦争責任を徹底的に反省し、総括する機会を逸した、とたった数行、書いてあるだけである。

 共同通信は他者の「戦争責任」をあげつらうより、自己の責任を問い直すべきではないか?


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