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しっかりせよ、WCRP──多神教世界から生まれた存在意義を忘れるなかれ [宗教]

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しっかりせよ、WCRP──多神教世界から生まれた存在意義を忘れるなかれ
(「神社新報」平成12年1月10日)
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昨年(平成11年)11月、世界宗教者平和会議(WCRP)は、世界3大宗教の起源地で、いまも血生臭い宗教紛争が絶えない中東のヨルダンで、第7回世界大会を開いた。

大会には世界100カ国から15の宗教、1200人が参加し、「アンマン宣言」が採択された。関係者は「大成功」と一様に自賛するが、果たしてそうなのか?


▽カトリックの下請けを演じる

イスラム圏初の大会は、参加者が過去最大規模に膨れ上がった。とくに日本からは約200人が繰り込んだ。

西アフリカ・シエラレオネなど、紛争地域での宗教協力の成果も発表された。

しかし、「行動(アクション)」路線をとる現在のベンドレイ事務総長体制下で、たとえばアジアでは、北朝鮮問題や中国の人権問題など、ほとんど進展がないし、途上国の飢えと貧困は解決の兆しさえうかがえない。

大会前、参加を表明していた北朝鮮は結局、姿を見せなかった。

全体テーマの「共生のための地球的行動──新たな千年期における宗教の役割」は、そもそもWCRPという諸宗教の運動に相応しいものだったろうか?

大会前の会見でWCRP側は、

「草案では『第3の千年紀』となっていたが、キリスト教色が強いので改めた。マスコミが使う『千年紀』もキリスト教的なので『千年期』に変えた」

と説明した。

しかしキリスト教色を払拭する努力の強調は、それ自体、いまのWCRPが結果的にカトリック戦略の下請的役割を果たしていることを浮き彫りにした。

第一、カトリックは「紀」ではなく「期」を用いているし、今大会の宣言文には「第3の千年期」とある。

会見で、記者は白柳誠一・日本委員会理事長(カトリック枢機卿)に、なぜ「共生」なのか、なぜ「千年期」なのか、カトリック的ではない、WCRP独自の見解を問いただしたが、白柳理事長からはカトリック流の回答しか返ってこなかった。

理事長はローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の「使徒的書簡」を引用し、「新しい千年期」の敷居をまたぐために過去を反省し、悔い改めることの必要を説いたが、とりわけ過去1000年の歴史を謙虚に反省すべきなのはカトリック自身ではないか?


▽「共生」から遠い日本のカトリック

教皇は「大聖年」を迎えるために、「2つの世界大戦、強制収容所や身の毛のよだつ虐殺の傷跡」を「悔い改める必要がある」と述べている。

教皇は悔い改めの材料として、アウシュビッツと南京虐殺を同列に考えているようだが、それならキリスト教がヨーロッパ大陸に浸透する過程で、あるいは大航海時代以後、異教世界を侵略し、異教徒を殺戮し、異教文化を破壊してきた歴史や植民地支配そのものを生んだ歴史へ理反省も悔い改めも「書簡」に見られないのは、なぜか?

「共生」が時代のキーワードであることは言を俟たないが、今回の大会を1面トップで報道した「カトリック新聞」の記事がほとんどカトリックの自己宣伝に終始しているのは、日本のカトリックの姿勢がいかに「共生」からほど遠いか、を如実に示していないか?

WCRPの創設者で、昨年(平成11年)、亡くなった庭野日敬師は自伝『この道』に、第2バチカン公会議に招待され、教皇パウロ6世に謁見したときの感動から、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教、イスラム教など、世界のすべての宗教・宗派を網羅して全宗教者が平和のテーブルにつく世界会議の開催を願うようになった──と説明している。

庭野師のWCRP創設は、カトリックの宗教運動に刺激を受けたとしても、また現在、その本部がニューヨークに置かれているにしても、アジアの多神教的世界、とりわけ、古来、宗教的共存を実現してきた日本で産声をあげた、という歴史の重要性を強調しすぎることはあるまい。

日本では450年前のキリスト教伝来まで、天皇を中心とした宗教的共生が実現されてきた。欧米キリスト教諸国の植民地とならず、独立を保ってきたのは日本がほとんど唯一といっていい。

その日本の宗教者が世界に果たすべき役割は、バチカンの一神教的世界戦略に付和雷同することではないはずだ。

WCRPは、日本そしてアジアの多神教世界から生まれた世界的宗教運動の意義を、ゆめゆめ忘れるべきではない。


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