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官邸で開かれた断食明けの食事会 [政教分離]

以下は旧「斎藤吉久のブログ」からの転載です

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 昨晩、首相官邸で、イスラム教の断食明けの食事会(イフタール)が開かれました。安倍首相の招きで、40カ国を超えるイスラム諸国の駐日大使が集まり、麻生外相や小池首相補佐官などが出席した、と伝えられます。

 イスラム教世界では聖典『コーラン』に基づいて、ラマダン月(イスラム暦の9月)の1カ月間、日の出前の礼拝の時間から日没まで、断食することが宗教的に義務づけられています。イスラム教の教えでは、断食によって人々は罪から解放され、浄化されると考えられているのです。日没後にとる断食明けの食事をイフタールといい、ふつうはナツメヤシを口にし、水分を補給します。今年はおおむね9月23日からラマダンが始まりました。

 3年前にはアラブ通として知られる小池環境相(当時)の主催で開かれ、昨年はイスラム文化への理解を深めることなどを目的に、小泉首相(当時)が主催しました。

 小泉首相の靖国神社参拝について「違憲」の疑いをもつ人が少なからずいます。たとえば、靖国訴訟のある判決は「国が靖国神社を支援しているという印象を与え、特定宗教を助長している」と述べています。また、ある全国紙は「政教分離は、国家神道に国教的な地位を与えた戦前の反省に基づいている。国家神道への信仰が強制され、国民の信教の自由が侵されたからだ」と社説に書いています。

 この憲法解釈に立つなら、首相官邸で開かれるイフタールは「イスラム教を支援し、助長している」ことになるのでしょうか。

 日本の憲法は宗教的な無色中立性を国に要求している、という誤解が多分にあるのでしょう。昭和20年暮れの神道指令と現行憲法の政教分離規定とを同一視する識者さえいます。たしかに神道指令には「国家と宗教の分離」を目的とすることが明記されていましたが、すでに占領後期にはGHQ自身が「国家と宗教の分離」ではなく「国家と宗教教団との分離」という解釈に変更しています(GHQ職員ウッダードの論攷)。昭和26年の貞明皇后の御大喪の例が示すように、GHQでさえ、もはや厳格な政教分離政策をとらなくなっていたのです。

 政教分離(国家と教会の分離)の本家本元とされるアメリカでは、完全分離主義は支持されず、明らかに国家と宗教の間に密接な関係があります。

 アメリカのホワイトハウスでは毎年、大統領が主催するイフタールが開かれ、大統領はイスラム指導者を前にしてイスラム教の精神を語り、「ラマダン、おめでとう。神の御加護がありますように」と演説するようです。

 ピルグリム・ファーザーズ(清教徒)がキリスト教理念に基づいて建国したという歴史を持つアメリカだけに、ホワイトハウスでは復活祭やクリスマスの行事も開かれます。大統領の就任時には「全国民の教会」ワシントン・ナショナル・カテドラルでミサが捧げられます。

 ところが日本では、首相の靖国神社参拝さえ批判されます。人間が宗教的存在である以上、人間が作り上げた国家が宗教的に無色中立ではあり得ないし、あえて絶対的中立を貫こうとすれば、逆に宗教伝統を排除し、ひいては信教の自由を否定する非宗教主義を国家自身が導くという矛盾をおかすことになりませんか。

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