宮内官僚と皇室研究家のアウンの呼吸? ──最初の提案者であることを否定する研究者 4 [女性宮家創設論]
以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です
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宮内官僚と皇室研究家のアウンの呼吸?
──最初の提案者であることを否定する研究者 4
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以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。
第1章 いつ、だれが、何のために言い出したのか?
第4節 最初の提案者であることを否定する研究者──所功教授の雑誌論考を手がかりに
▽4 宮内官僚と皇室研究家のアウンの呼吸?
雑誌「WiLL」平成23年10月号から始まった、所功先生の連載「『皇室典範』改正問題の核心」の第2回「改正をどう進めるか」(同誌同年11月号)には、次のように書かれています。
「(皇族の数が激減する)こうした危機を回避するには、皇族女子も男子と同様に、宮家を創立して継承できるよう、現行皇室典範第12条を改正するほかない。
このような案は、すでに前侍従長(現侍従職御用掛)の渡邉允氏が、平成21年11月11日付『日本経済新聞』朝刊に掲載されたインタビュー記事の中で、『皇統論議は将来の世代に委ね……女性宮家設立に合意できないものか』と述べておられる(翌22年1月31日放映のテレビ朝日「サンデー・プロジェクト」録画対談、および「週刊朝日」同年12月31日号の特別対談でも同趣の発言があった)」
所先生のいう「日経のインタビュー記事」は不正確です。
日経は御在位20年企画として、21年11月6日から社会面に、編集委員の井上亮、常広文太記者が担当する「平成の天皇 即位20年の姿」という連載を載せていたのです。11日は連載の最後、5回目で、「皇統の悩み 『女系』巡り割れる議論」でした。
記事は
「宮内庁には『このままでは宮家がゼロになる』との危機感から、女性皇族を残すため女性宮家設立を望む声が強い。しかし『女系天皇への道筋』として反発を招くとの意見もある」
と述べ、そのあとに渡邉允前侍従長(いまは元職)の私見と断ったうえで、既述の「女性宮家設立」案を語らせています。
「渡邉前侍従長は私見として『皇統論議は将来の世代に委ね、今は論議しないという前提で、女性宮家設立に合意できないものか。女系ありきではなく、さまざまな可能性が残る』と話す」
所先生の「女性宮家」論と渡邉侍従長の「女性宮家」論は、少なくとも表向きは異なります。一方は皇位継承論であり、一方の目的は「皇室の御活動」の確保です。けれども、いずれにせよ、女系継承容認に至ることはいわずもがなです。
結局のところ、いったい誰が「女性宮家」を最初に言い出したのか、宮内官僚と皇室研究者とメディアとのアウンの呼吸でしょうか。所先生の「WiLL」連載はちょうど、読売が「女性宮家」創設を「スクープ」し、前侍従長が文庫本の「後書き」を書いていた時期と不思議に符合します。
渡邉前侍従長によれば、「女性宮家」創設論は皇位継承問題とは「別の次元」の問題とされています。「別の次元」と先手を打って、女性天皇・女系容認反対論を封じ込め、一方では研究者による理論武装および国民への「啓蒙」も着々と進行する。じつに用意周到な、賢い戦術です。
さすが世界的に有能な、日本の官僚ならでは、と感心しますが、なぜ猫だましのような姑息な手法を弄してまで、皇室の歴史にない、「女性宮家」創設に走らなければならないのでしょうか?
きちんと説明しても、国民は納得しないとの読みでもあるのでしょうか。それほど日本国民の民度は低いのでしょうか。
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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宮内官僚と皇室研究家のアウンの呼吸?
──最初の提案者であることを否定する研究者 4
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以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの転載です。一部に加筆修正があります。
第1章 いつ、だれが、何のために言い出したのか?
第4節 最初の提案者であることを否定する研究者──所功教授の雑誌論考を手がかりに
▽4 宮内官僚と皇室研究家のアウンの呼吸?
雑誌「WiLL」平成23年10月号から始まった、所功先生の連載「『皇室典範』改正問題の核心」の第2回「改正をどう進めるか」(同誌同年11月号)には、次のように書かれています。
「(皇族の数が激減する)こうした危機を回避するには、皇族女子も男子と同様に、宮家を創立して継承できるよう、現行皇室典範第12条を改正するほかない。
このような案は、すでに前侍従長(現侍従職御用掛)の渡邉允氏が、平成21年11月11日付『日本経済新聞』朝刊に掲載されたインタビュー記事の中で、『皇統論議は将来の世代に委ね……女性宮家設立に合意できないものか』と述べておられる(翌22年1月31日放映のテレビ朝日「サンデー・プロジェクト」録画対談、および「週刊朝日」同年12月31日号の特別対談でも同趣の発言があった)」
所先生のいう「日経のインタビュー記事」は不正確です。
日経は御在位20年企画として、21年11月6日から社会面に、編集委員の井上亮、常広文太記者が担当する「平成の天皇 即位20年の姿」という連載を載せていたのです。11日は連載の最後、5回目で、「皇統の悩み 『女系』巡り割れる議論」でした。
記事は
「宮内庁には『このままでは宮家がゼロになる』との危機感から、女性皇族を残すため女性宮家設立を望む声が強い。しかし『女系天皇への道筋』として反発を招くとの意見もある」
と述べ、そのあとに渡邉允前侍従長(いまは元職)の私見と断ったうえで、既述の「女性宮家設立」案を語らせています。
「渡邉前侍従長は私見として『皇統論議は将来の世代に委ね、今は論議しないという前提で、女性宮家設立に合意できないものか。女系ありきではなく、さまざまな可能性が残る』と話す」
所先生の「女性宮家」論と渡邉侍従長の「女性宮家」論は、少なくとも表向きは異なります。一方は皇位継承論であり、一方の目的は「皇室の御活動」の確保です。けれども、いずれにせよ、女系継承容認に至ることはいわずもがなです。
結局のところ、いったい誰が「女性宮家」を最初に言い出したのか、宮内官僚と皇室研究者とメディアとのアウンの呼吸でしょうか。所先生の「WiLL」連載はちょうど、読売が「女性宮家」創設を「スクープ」し、前侍従長が文庫本の「後書き」を書いていた時期と不思議に符合します。
渡邉前侍従長によれば、「女性宮家」創設論は皇位継承問題とは「別の次元」の問題とされています。「別の次元」と先手を打って、女性天皇・女系容認反対論を封じ込め、一方では研究者による理論武装および国民への「啓蒙」も着々と進行する。じつに用意周到な、賢い戦術です。
さすが世界的に有能な、日本の官僚ならでは、と感心しますが、なぜ猫だましのような姑息な手法を弄してまで、皇室の歴史にない、「女性宮家」創設に走らなければならないのでしょうか?
きちんと説明しても、国民は納得しないとの読みでもあるのでしょうか。それほど日本国民の民度は低いのでしょうか。
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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