SSブログ

歴史的天皇から「象徴」天皇へ  ──「1.5代」象徴天皇制度下の創設論 1 [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2017年6月12日)からの転載です


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 歴史的天皇から「象徴」天皇へ
 ──「1.5代」象徴天皇制度下の創設論 1
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンを始めました。皆様、ご協力のほどよろしくお願いします。〈https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB

 さて、以下は、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋です。一部に加筆修正があります。


第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む

第3節 「1.5代」象徴天皇制度下の創設論──戦後行政史を追究しない百地章日大教授の反対論


 百地章日大教授(憲法学。当時)の反対論を取り上げます。
koukyo01.gif
 あらかじめお断りしておきますが、私は先生に対して、何ら悪意をもつものではありません。むしろ逆に、私にとって個人的な恩義のある、大切な先生です。

 けれども学問的な探究は別であり、まして皇室に関することは国家の基本に関わることであって、個人的な感情を差し挟むべきではないだろうし、尊敬する先生であればこそ、あえて批判的に、蛮勇をふるって検証したいと考えた次第です。

 今後の建設的な議論に期待したいからです。


▽1 歴史的天皇から「象徴」天皇へ

 百地先生の意見発表は24年4月10日に、櫻井よしこさんのヒアリングのあと、行われました。

 議事録および配付資料によると、論点はつぎの4点です。

(1)「女性宮家」創設論への疑問
(2)憲法第2条「皇位の世襲」について
(3)陛下の御公務ご負担軽減論について
(4)元皇族の皇籍復帰について

 とくに(1)の「女性宮家」創設論については、

(1)古代からの「宮家」の歴史からいって、「女性宮家」は意味をなさず、歴史上、存在しない
(2)「制度設計」上、問題点がある
(3)「女系天皇」に道をひらく危険性がある
(4)国民に馴染みのない「民間成年男子」が皇室に入ることに最大の問題がある
(5)「女性宮家」創設は「陛下のご意向」とも報道されるが本当か
(6)渡邉允前侍従長は皇位継承問題を「次世代への先送り」論を述べているが疑問がある

 という6つの疑問点を、きびしく指摘しています。

 ほとんど同感ですが、気になるのは2点、1つは百地先生の主張がほとんど皇位継承に関する議論だったこと、ふたつ目は戦後史の重要事実が脱落していることです。

 まず、政府のヒアリングの目的は、皇位継承論ではありません。あくまで「皇室の御活動」維持論なのでした。また、ヒアリングの趣旨を説明する政府側の資料には、「女性宮家」という表現もありません。

 先生が仰せの通り、「女性宮家」が歴史的な「宮家」の概念から逸脱していることは、おそらく政府内の提唱者たちには百も承知のことに違いありません。にもかかわらず、なぜいま創設論が浮上してきたのか、が追及されるべきでしょう。

 なぜ百地先生は「女性宮家」という表現を用い、もっぱら皇位継承論を展開するのか、そこが重要で、政府の発問をこそ、むしろ逆に追及すべきなのです。けれども、百地先生の説明は十分ではないように思います。

 私は第1章で、つぎの3点を明らかにしました。

(1)平成8年ごろから政府部内で始まった皇室典範改正の非公式検討では、女性天皇容認と「女性宮家」創設が「2つの柱」とされたこと

(2)典範改正の作業が有識者会議の公式検討段階に入ると、「女性宮家」の表現は消えたものの、女性皇族が婚姻後も皇室にとどまるという中味は生きていたこと

(3)平成23年秋来、急激に浮上した「女性宮家」創設は、ほとんど同じ顔ぶれで10数年、議論されてきたことの延長線上にあること

 もし女性天皇・女系継承を容認するのであれば、女性皇族が御結婚後も皇室にとどまる必要があるのは、当然です。女性天皇・女系継承を容認する新たな天皇制度のもとでの「皇統の備え」なのでした。

 百地先生は、125代に及ぶ皇室の歴史に、「女性宮家」が概念上も、実態としてもない、意味をなさないと指摘しましたが、現行憲法を起点とする「1.5代」象徴天皇制度の下でなら、論理上、成立し得ます。

 であるからこそ、政府は「女性宮家」ヒアリングを開始したのであり、百地先生もヒアリングをお受けになったはずです。

 言い換えると、政府はなぜいま歴史的天皇とは異なる天皇制度を模索しているのか、に斬り込む必要があります。それには隠蔽された史実を見定める視点と追究(追及)が求められます。それがなければ、問題の本質が見えてこないはずです。

 ところが、たいへん失礼ながら、百地先生の反対論には、戦後皇室関係史の重要事実が脱落しているため、なぜ「女性宮家」創設論が浮上してきたか、が見えません。これが第2のポイントです。


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。