衣の裾から鎧が見える ──支離滅裂な「論点整理」 4 [女性宮家創設論]
以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です
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衣の裾から鎧が見える
──支離滅裂な「論点整理」 4
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私は運動家ではありませんが、やむにやまれぬという思いから、組織も資金もないなか、「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンを、1人で始めました。現状では悪しき先例が踏襲されるに違いありません。改善への一歩を踏み出すために、同憂の士を心から求めます。
〈https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB〉
さて、以下、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。
第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む
第7節 支離滅裂な「論点整理」──変更された制度改革の目的意識
▽4 衣の裾から鎧が見える
さらに、「論点整理」には、「別添2」の参考資料に、「2 天皇皇后両陛下・皇族殿下の御活動」が、じつに12ページにわたって説明されています。
「文仁親王同妃両殿下(秋篠宮)の御活動」
「正仁親王同妃両殿下(常陸宮)の御活動」
「崇仁親王同妃両殿下(三笠宮)の御活動」
「寛仁親王同妃両殿下の御活動」
「宜仁親王殿下(桂宮)の御活動」
「憲仁親王妃久子殿下(高円宮)の御活動」
が解説され、「総裁職など」の肩書きが列記されています。
政府の発想としては、国民との絆を強固にしてきたこれらのご活動が、将来、皇族の規模が縮小した場合、どうなるのか、と心配しているかに見えます。
けれども、第一に、皇族方の社会活動は、「天皇の御活動」を「分担」しているのではありません。各財団法人、社団法人にとっては名誉職でしょうから、宮様総裁が不在なら組織が成り立たないということはないでしょうし、将来、不都合が生じるなら、それは各団体が考えるべきことです。
既述したように、日本オリンピック委員会は旧皇族の子孫を会長とし、伊勢神宮では元内親王が臨時祭主をお務めですが、それぞれの事務や経費の負担については、それぞれが考えるべきことであって、政府が介入すべきことではないでしょう。
それぞれの団体の活動は、行政とは直接関係のない形で行われているはずです。たとえば、皇族方の社会福祉の分野でのご活動が高く評価されるのは当然ですが、政府がすべきことは社会福祉政策のいっそうの充実であって、行政とは一線を画すべき皇族方のご活動の維持を目的として、皇族の規模を確保することではないでしょう。
ましてや、これらの団体の活動維持のために、皇室制度を改革する必要など、まったくあり得ません。
制度改革が必要だとすれば、男統の絶えない皇室制度をこそ、真剣に、慎重に模索するのが、先決です。
政府はいったい、何のために、過去の歴史にない皇室制度改革に挑んでいるのでしょうか。「論点整理」は「終わりに」で、次のように棚上げしたはずの皇位継承論に言及しています。
「なお、今回の検討では、皇室の御活動維持の観点から、緊急性の高い女性皇族の婚姻後の身分の問題に絞って議論を行ったが、現在、皇太子殿下、秋篠宮殿下の次の世代の皇位継承資格者は、悠仁親王殿下お一方であり、安定的な皇位の継承を確保するという意味では、将来の不安が解消されているわけではない。安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本に関わる事項であり、国民各層の様々な議論も十分に踏まえながら、引き続き検討していく必要がある」
衣の裾から鎧が見える、ということではないのでしょうか。もともと「女性宮家」創設論は10年以上前に、女性天皇・女系継承容認論と一体のかたちで生まれたのです。
今回の「女性宮家」創設を直接的に提唱したと目される前侍従長(いまは元職。以下同じ)は
「皇位継承問題とは別の次元の問題」
と文庫本の後書きに明記し、民主党政権は皇室制度ヒアリングを行うに当たって、
「皇位継承問題とは切り離して行う」
と念押ししましたが、それらは真っ赤なウソだったことになります。
ごくふつうの人なら、よもや側近が悠久なる皇室の伝統とはまったく異質の天皇観に取り憑かれ、皇室の歴史に終止符を打つような謀叛を企てていることなど、およそ想像だにしないことでしょう。
しかし、ジャーナリズムやアカデミズムからも、そのような指摘も批判も聞かれません。「女性宮家」創設に反対する有識者から、提唱者である前侍従長に対する批判の言葉さえ聞いた試しがありません。
それどころか、「まえがきにかえて」で言及したように、マスメディアは前侍従長を重用し、前侍従長は皇室の歴史と伝統に相違する「1.5代」天皇論を小脇に抱えて全国を行脚しておいでです。
前侍従長の体験的天皇論は多くの国民に感動を与え、魅了しているようです。けれども、私にはむしろ、謀叛隠しのアリバイ工作のように見えます。つくづく日本の官僚は優秀だと驚嘆します。
しかしそれほど卓抜なる能力をお持ちならば、長い歴史をかけて形成されてきた天皇統治の意義は何か、わが祖先たちはいかなる志をもって世界にまれなる天皇制度を築いてきたのか、あらためて歴史を読み直していただけないものでしょうか?
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
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衣の裾から鎧が見える
──支離滅裂な「論点整理」 4
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私は運動家ではありませんが、やむにやまれぬという思いから、組織も資金もないなか、「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンを、1人で始めました。現状では悪しき先例が踏襲されるに違いありません。改善への一歩を踏み出すために、同憂の士を心から求めます。
〈https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB〉
さて、以下、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。
第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む
第7節 支離滅裂な「論点整理」──変更された制度改革の目的意識
▽4 衣の裾から鎧が見える
さらに、「論点整理」には、「別添2」の参考資料に、「2 天皇皇后両陛下・皇族殿下の御活動」が、じつに12ページにわたって説明されています。
「文仁親王同妃両殿下(秋篠宮)の御活動」
「正仁親王同妃両殿下(常陸宮)の御活動」
「崇仁親王同妃両殿下(三笠宮)の御活動」
「寛仁親王同妃両殿下の御活動」
「宜仁親王殿下(桂宮)の御活動」
「憲仁親王妃久子殿下(高円宮)の御活動」
が解説され、「総裁職など」の肩書きが列記されています。
政府の発想としては、国民との絆を強固にしてきたこれらのご活動が、将来、皇族の規模が縮小した場合、どうなるのか、と心配しているかに見えます。
けれども、第一に、皇族方の社会活動は、「天皇の御活動」を「分担」しているのではありません。各財団法人、社団法人にとっては名誉職でしょうから、宮様総裁が不在なら組織が成り立たないということはないでしょうし、将来、不都合が生じるなら、それは各団体が考えるべきことです。
既述したように、日本オリンピック委員会は旧皇族の子孫を会長とし、伊勢神宮では元内親王が臨時祭主をお務めですが、それぞれの事務や経費の負担については、それぞれが考えるべきことであって、政府が介入すべきことではないでしょう。
それぞれの団体の活動は、行政とは直接関係のない形で行われているはずです。たとえば、皇族方の社会福祉の分野でのご活動が高く評価されるのは当然ですが、政府がすべきことは社会福祉政策のいっそうの充実であって、行政とは一線を画すべき皇族方のご活動の維持を目的として、皇族の規模を確保することではないでしょう。
ましてや、これらの団体の活動維持のために、皇室制度を改革する必要など、まったくあり得ません。
制度改革が必要だとすれば、男統の絶えない皇室制度をこそ、真剣に、慎重に模索するのが、先決です。
政府はいったい、何のために、過去の歴史にない皇室制度改革に挑んでいるのでしょうか。「論点整理」は「終わりに」で、次のように棚上げしたはずの皇位継承論に言及しています。
「なお、今回の検討では、皇室の御活動維持の観点から、緊急性の高い女性皇族の婚姻後の身分の問題に絞って議論を行ったが、現在、皇太子殿下、秋篠宮殿下の次の世代の皇位継承資格者は、悠仁親王殿下お一方であり、安定的な皇位の継承を確保するという意味では、将来の不安が解消されているわけではない。安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本に関わる事項であり、国民各層の様々な議論も十分に踏まえながら、引き続き検討していく必要がある」
衣の裾から鎧が見える、ということではないのでしょうか。もともと「女性宮家」創設論は10年以上前に、女性天皇・女系継承容認論と一体のかたちで生まれたのです。
今回の「女性宮家」創設を直接的に提唱したと目される前侍従長(いまは元職。以下同じ)は
「皇位継承問題とは別の次元の問題」
と文庫本の後書きに明記し、民主党政権は皇室制度ヒアリングを行うに当たって、
「皇位継承問題とは切り離して行う」
と念押ししましたが、それらは真っ赤なウソだったことになります。
ごくふつうの人なら、よもや側近が悠久なる皇室の伝統とはまったく異質の天皇観に取り憑かれ、皇室の歴史に終止符を打つような謀叛を企てていることなど、およそ想像だにしないことでしょう。
しかし、ジャーナリズムやアカデミズムからも、そのような指摘も批判も聞かれません。「女性宮家」創設に反対する有識者から、提唱者である前侍従長に対する批判の言葉さえ聞いた試しがありません。
それどころか、「まえがきにかえて」で言及したように、マスメディアは前侍従長を重用し、前侍従長は皇室の歴史と伝統に相違する「1.5代」天皇論を小脇に抱えて全国を行脚しておいでです。
前侍従長の体験的天皇論は多くの国民に感動を与え、魅了しているようです。けれども、私にはむしろ、謀叛隠しのアリバイ工作のように見えます。つくづく日本の官僚は優秀だと驚嘆します。
しかしそれほど卓抜なる能力をお持ちならば、長い歴史をかけて形成されてきた天皇統治の意義は何か、わが祖先たちはいかなる志をもって世界にまれなる天皇制度を築いてきたのか、あらためて歴史を読み直していただけないものでしょうか?
以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります
2017-07-17 20:39
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