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「女性宮家」と称さない「女性宮家」有識者ヒアリング──皇籍離脱後も「御活動」は可能なのに [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジン(2012年5月27日)からの転載です


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「女性宮家」と称さない「女性宮家」有識者ヒアリング
──皇籍離脱後も「御活動」は可能なのに
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 遅蒔きながら、皇室制度に関する有識者ヒアリングの資料を読んでみたいと思います。

 今年2月の公表資料によれば、政府の問題意識は、「現行の皇室典範の規定では、女性の皇族が皇族以外の方と婚姻された時は皇族の身分を離れることになっていることから、今後、皇室の御活動をどのように安定的に維持し、天皇皇后両陛下の御負担をどう軽減していくかが緊急性の高い課題となっている」ということです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/yushikisha.html

 したがって、「このため、各界の有識者の方々から、皇室の御活動の意義や、女性の皇族に皇族以外の方と婚姻された後も御活動を継続していただくとした場合の制度の在り方等について幅広くご意見を伺い、今後の制度検討の参考とする」というのが今回のヒアリングの目的です。

 たいへん興味深いことに、「女性宮家」という表現はどこにもありません。「今回の検討は緊急性の高い皇室の御活動の維持と女性皇族の問題に絞り、皇位継承問題とは切り離して行う」と念を押している点も注目されます。

 それなら「女性宮家」創設とは違うのか、というと、まったくそうではありません。「女性宮家」といわないところに意味があるのでしょう。皇位継承問題と無関係のはずもありません。


▽1 対象者はほとんどが大学教授

 ヒアリングは以下の日程で、これまでに5回、行われました。

第1回 2月29日 今谷明帝京大学特任教授(日本中世史)、田原総一朗氏(ジャーナリスト)
第2回 3月29日 山内昌之東京大学大学院教授(近代イスラム)、大石眞京都大学大学院教授(憲法学)
第3回 4月10日 櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)、百地章日本大学教授(憲法学)
第4回 4月23日 市村真一京都大学名誉教授(経済発展論)、笠原英彦慶應義塾大学教授(日本政治史、皇室制度史)
第5回 5月21日 小田部雄次静岡福祉大学教授(日本近現代史。皇室制度)、島善高早稲田大学教授(法制史、皇室史)

 これまでヒアリングに応じたのは10名の方々で、うち2人がジャーナリスト、あとの8人はみな大学教授です。「各界の有識者の方々から、幅広くご意見を伺い、参考とする」といいながら、結局、常識的、官僚的人選が行われているように思います。

 ヒアリングの会場は首相官邸で、ヒアリングの対象者のほかに、内閣官房副長官(政務、事務)、園部逸夫内閣官房参与、内閣官房皇室典範改正準備室の職員が出席し、原則として公開されているようです。本人が30分程度、意見発表し、その後、10分程度の質疑応答をするという形式です。


▽2 皇室の御活動を維持するために?

 ヒアリングの質問項目は、以下の6点です。

1、(象徴天皇制度と皇室の御活動の意義について) 現在の皇室の御活動をどのように受け止めているか? 象徴天皇制度の下で、皇室の御活動の意義をどのように考えるか?

2、(今後、皇室の御活動の維持が困難となることについて) 現在の皇室の構成に鑑みると、今後、皇室典範第12条の規定(皇族女子は、天皇および皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる)などにより皇族数が減少し、現在のような皇室の御活動の維持が困難となることについて、どのように考えるか?(皇室典範改正の必要性・緊急性が高まっていると考えるが、このことについてどう思うか?)

3、(皇室の御活動維持の方策について) 皇室の御活動維持のため、「女性皇族(内親王・女王)に婚姻後も皇族の身分を保持いただくという方策について、どう考えるか? 皇室の御活動維持のため、他に採りうる方策として、どのようなことが考えられるか? また、そうした方策についてどのような見解を持っているか?

4、(女性皇族に婚姻後も皇族の身分を保持いただくとする場合の制度のあり方について) 改正後の皇室の規模はどのくらいがふさわしいか? 配偶者および子の身分やその御活動についてどのようなあり方が望ましいのか? 皇族とすべきか否か?

5、(皇室典範改正に関する議論の進め方について) 皇室典範について、今回、今後の皇室の御活動維持の観点に絞り、緊急課題として議論することについて、どう考えるか?

6、(その他) 女性皇族に婚姻後も皇族の身分を保持いただくこととした場合、婚姻等が円滑になされるよう、どのような配慮が必要か? その他、留意すべきことは何か?

 要するに、皇室の御活動の維持が必要だけれども、今後、女性皇族の婚姻によって皇族の数が減少し、御活動が維持できなくなる懸念があるから、皇室典範を緊急に改正し、女性皇族が婚姻後も皇室に残れるようにしたい、というのが政府の発想のようです。

 婚姻後も皇室に残る、というのがいわゆる「女性宮家」で、「その子」に皇位継承権が与えられるということになれば、「皇室の御活動の維持と女性皇族の問題に絞り、皇位継承問題とは切り離して行う」というわけにはいきません。


▽3 皇室の御活動とは何か?

 そもそも「皇室の御活動」とは具体的に何をさすのでしょうか?

 憲法には、内閣総理大臣の任命、国会の召集など、天皇の国事行為に関する規定があり、内閣の助言と承認により行われていますが、あくまで天皇の行為であって、憲法には「皇室の御活動」についての規定はありません。

 国事行為に関連して、宮内庁が説明するように、天皇は国会の開会式に御臨席になり、宮殿で行われる首相や最高裁長官の親任式や外国大使の信任状捧呈式などに臨まれます。このほか、天皇の公的行為として、拝謁、ご会見、茶会、午餐、晩餐などが行われていますが、これらのご公務はとくに定められた明文があるわけではありません。

 まして、皇室典範を緊急に改正し、女性皇族の皇籍離脱を阻んでまでして維持しなければならない、皇族による「皇室の御活動」とはいったい何をさすのでしょうか?

 たしかに、たとえば常陸宮殿下は、日本鳥類保護連盟、日本肢体不自由児協会、発明協会など数々の団体の総裁や名誉総裁をお務めで、妃殿下とともに、全国健康福祉祭や全国少年少女発明クラブ創作展などに御臨席になっています。

 また寛仁親王殿下は、友愛十字会、ありのまま舎、恩賜財団済生会、高松宮妃癌研究基金などの総裁などをお務めで、障害者福祉、スポーツ振興などの面で幅広い活動をなさっています。

 こうした御活動が象徴天皇制度の維持のためには不可欠で、そのために緊急に皇室典範を改正する必要があると政府は考えているのでしょうか?

 たとえば、皇族方の社会活動は行政とは直接関係のない形で行われているはずです。社会福祉の分野での御活動を高く評価されるのは当然としても、政府がすべきことは社会福祉政策のいっそうの充実であって、行政とは一線を画すべき皇室の御活動の維持のために、皇族の規模を確保することではないでしょう。

 そもそも天皇・皇族が活動することによって天皇の制度が維持されるという考え方は、すぐれて近代的な発想ではあり、日本の天皇の制度は「行動する」天皇によって維持されてきたのではありません。極端に言えば、天皇がおられない空位の時代でさえ、天皇の制度は続いてきたのですから。

 国際オリンピック委員会は2020年のオリンピック・パラリンピック大会の正式な立候補都市の1つに東京を選定しましたが、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長は旧皇族です。黒田清子元内親王は伊勢神宮の臨時祭主に就任されています。

 皇室を離脱されたあとでも御活動は可能なのです。
 
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