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「抗日」戦士が眠る韓国国立墓地──中国・韓国の靖国参拝批判に反論する その3 [靖国問題]

以下は斎藤吉久メールマガジンからの転載です


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 「抗日」戦士が眠る韓国国立墓地
 ──中国・韓国の靖国参拝批判に反論する その3
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「内外の人々がわだかまりなく追悼の誠を捧げるにはどうすればいいか」。昨夏、中国・韓国の猛抗議のなか、靖國神社に参拝した小泉首相の談話が「追悼・平和懇」の出発点である。しかし、今年一月の会合で、政府事務局が諸外国の戦歿者追悼事例を説明したとき、中国・韓国は取り上げられてゐない。

 首相参拝にもっとも反撥する両国では、どのやうな慰霊が行はれてゐるのか、その実態に学ばず、むしろ困難な議論を避けるかのやうな姿勢。それでゐて、懇談会の結論は新施設必要論でまとまりつつあるともいはれる。それでいいのか。

 今回は、韓国国立墓地の実態を取り上げる。ほかならぬ「わだかまり」について考へさせてくれる格好の題材だと思はれるからだ。


 韓国国立墓地「顕忠院」は、かつて朝鮮神宮が鎮まってゐたソウル市南山の南、漢江の対岸に位置してゐる。面積は明治神宮内苑のほぼ二倍、四十三万坪。三方を冠岳山の山並みに囲まれ、四季折々の花が咲く庭園墓地に十六万三千余の墓石が整然と並んでゐる。


◇「反共」と「抗日」

 その歴史は北朝鮮との軍事対決に始まる。最初は国軍墓地で、朝鮮戦争後の一九五五年に造成された。無名戦士の墓や在日学徒義勇軍の墓もある。六五年には国立墓地に昇格し、警察官も埋葬されるやうになった。

 顕忠院のシンボル「顕忠塔」が建立されたのは六七年。高さ三十一メートル、花崗岩製で、上空から見ると十字形をしてゐる。英雄烈士の御霊(みたま)が東西南北、国をあまねく守護するといふ意味合ひがあるらしい。祭壇には祭壇前の香炉は朝鮮戦争で戦死した将兵の認識票が材料に使はれてゐるといふ。

 塔の左右には二十三メートルの壁が翼を広げる。左側は朝鮮戦争など、右側は抗日独立運動をシンボライズしたレリーフ。顕忠院は「反共」と「抗日」といふ二つの大きな民族の闘ひがテーマになってゐることがわかる。塔内部には朝鮮戦争時の戦死者十万四千人の位牌がずらりと並び、地下には無名戦士六千二百余柱の遺骨を納める納骨堂がある。

 七一年には、李氏朝鮮末期の義兵、三・一独立運動、抗日武装闘争の活動家など三百五十人を祀る「顕忠台」が建てられた。最近では九三年に、上海で抗日独立運動を展開した大韓民国臨時政府の要人たちを祀る慰霊碑と墓域が設けられた。近年になるほど、「抗日」の要素が拡大してゐるやうな印象がある。


◇慰霊と歴史批判

 顕忠院の最大のイベントは六月六日。この日が「顕忠の日」とされる理由はとくにないとのことだが、国の休日となるこの日、国務総理直属の機関が主催し、政府、遺族、各界代表、各国大使館関係者ら五千人が出席する追悼式が開かれ、全国民がいっせいに黙祷を捧げる。韓国民は国を挙げて、「反共」とともに「抗日」精神を再確認するのだ。

 愛国心の涵養は大切だが、ここに「わだかまりなく」といふ、恩讐を超えた和解の発想はあるのだらうか。

 いみじくも金大中大統領は、「戦犯が合祀されない国立墓地のやうなものを日本が造るなら、参拝する用意がある」と語ったと伝へられる。大統領は「戦犯」を毛嫌ひし、一定の歴史観に基づき、他国の歴史をも批判する。実証的歴史検証なくして未来の創造はあり得ないが、慰霊の聖域に歴史批判を持ち込むのはいかがなものか。

 顕忠院には李承晩、朴正熙両大統領の墓所がある。片や革命で国外に追はれ、片やしばしば「軍事独裁」のレッテル付きで語られる二人だが、韓国民にとっては紛れもなく「国家指導者」であり、だからこそここに眠ってゐる。

 二人について慰霊・顕彰の誠を捧げようとする韓国民が、なぜ日本に対して、その良識を貫けないのか。日本の「戦犯」も、歴史的評価はどうあれ、やはり愛国的指導者に違ひはない。

◇「鎮霊社」の祈り

 他方、日本側だが、韓国の批判をなだめるかのやうに昨年十月、小泉首相が訪韓し、金大統領との会談に先立って、国立墓地に詣でた。

 顕忠院のホームページには参詣した外国要人の画像が載ってゐるが、その筆頭は小泉首相だ。首相は今年三月にも参拝した。以前には小渕、森両首相も献花してゐる。

 韓国側は靖國神社に祀られてゐる「戦犯」を蛇蝎(だかつ)のごとくに忌避し、日本側は「抗日」のシンボル施設で何度も頭を下げる。異様な外交関係ではないか。

 この記事が読者の手元に届くころには、高円宮・同妃両殿下が表敬されたとのニュースが伝へられてゐるだらう。日本政府は無節操な譲歩を一方的に繰り返したあげく、日韓の政治対立に皇室をも巻き込まうとするのか。

 追悼・平和懇では「日本との戦争で犠牲になった外国人をも慰霊したい」と提案された。日本には怨親(おんしん)平等、敵味方の別なく慰霊する、世界に誇るべき精神的伝統があるとし、暗に靖國神社を「自国の味方しか祀らない」と批判してゐる。

 しかし同社境内に鎮まる鎮霊社には、本社に祀られざる日本人の御霊と世界の全戦歿者の御霊が祀られ、日々、厳粛な祈りが捧げられてゐる。それでも近隣諸国からの批判は収まらない。なぜだらう。「わだかまり」を克服するために何が必要のか。
タグ:靖国問題
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