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宮内府長官官房文書課長の依命通牒 ──「1.5代」象徴天皇制度下の創設論 3 [女性宮家創設論]

以下は「誤解だらけの天皇・皇室」メールマガジンからの転載です


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宮内府長官官房文書課長の依命通牒
──「1.5代」象徴天皇制度下の創設論 3
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 やむにやまれぬ思いから、たった1人で、「御代替わり諸儀礼を『国の行事』に」キャンペーンをネット上で始めました。ご協力のほどよろしくお願いします。

 国会では今上天皇の譲位を認める皇室典範特例法が成立しました。これによって、御代替わり諸儀礼の正常化はいよいよ待ったなしです。
https://www.change.org/p/%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%AE%AE%E5%86%85%E5%BA%81-%E5%BE%A1%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E3%82%8F%E3%82%8A%E8%AB%B8%E5%84%80%E7%A4%BC%E3%82%92-%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BA%8B-%E3%81%AB

「女性宮家」創設の議論も再燃しました。こちらも目が離せません。

 ということで、拙著『検証「女性宮家」論議──「1・5代」天皇論に取り憑かれた側近たちの謀叛』からの抜粋を続けます。一部に加筆修正があります。


第2章 有識者ヒアリングおよび「論点整理」を読む

第3節 「1.5代」象徴天皇制度下の創設論──戦後行政史を追究しない百地章日大教授の反対論


▽3 宮内府長官官房文書課長の依命通牒
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 百地先生は著書の「第十章 憲法と大嘗祭(だいじょうさい)」で、天皇の即位儀礼である大嘗祭をめぐる従来の違憲論・合憲論、そして政府解釈を紹介しつつ、大嘗祭国事説の当否を検討し、「憲法問題を中心」に精緻な議論を展開しています。

 とくに政府見解について、

(1)昭和21年12月6日および17日の、第91回帝国議会での金森徳次郎国務大臣の答弁

(2)昭和54年4月17日の、衆院内閣委員会での真田秀夫内閣法制局長官の答弁

(3)昭和59年4月5日の、衆院内閣委員会での前田正道内閣法制局第一部長の答弁

 などを例示し、大嘗祭を天皇の国事行為として実施することについて、

「政府は、確かにこれまで否定的態度をとり続けてきた」

 と指摘しています。

 たとえば金森国務大臣は、

「皇位継承に伴って、種々なる儀式が行わせられる(ことになるが)、改正憲法におきましては、宗教上の意義をもった事柄は、国の儀式とはいたさないことになっております」(百地先生の引用文のまま)

 と答弁していると解説されています。百地先生の説明通り、

「理由は政教分離に違反するという点にある」

 ことは勿論です。

 けれども、政府が戦後一貫して、宮中祭祀に対して、「否定的態度をとり続けてきた」のではありません。政教分離に関する憲法解釈・運用は占領前期と後期では異なるし、昭和40~50年代に一変しています。ポイントはここです。

 歴史を振り返ると、終戦直後の昭和20年12月、GHQは「宗教を国家より分離する」ことを目的に、いわゆる神道指令を発しました。東京駅の門松や注連縄(しめなわ)までも撤去させるほど過酷なもので、宮中祭祀は存続を認められたものの、公的性を否定され、「皇室の私事」に貶(おとし)められました。

 非占領国の宗教に干渉することは戦時国際法に明確に違反していますが、戦時中から「国家神道」こそ「軍国主義・超国家主義」の源泉だという考えに固まっていたアメリカは、あえて無視して干渉しました。

 金森長官は21年、前記した帝国議会での答弁の際、皇室典範改正案に大嘗祭に関する記述がないことについて、信仰面を含むことから明文化は不適当と考えられたと述べています。つまり、大嘗祭の挙行が不適当だと考えられたわけではないのでした。

 当時は占領期です。「祭祀は天皇の私事」とするGHQの解釈に従わざるを得なかったのです。

 翌年、日本国憲法が施行され、それに伴って宮中祭祀について定める皇室祭祀令など戦前の皇室令はすべて廃止され、天皇の祭祀は成文法上の根拠を失いました。

 けれども、祭祀の伝統は辛うじてながら守られました。「皇室令及び付属法令廃止に伴い事務取扱に関する通牒」と題される、宮内府長官官房文書課長・高尾亮一名による依命通牒、いまでいう審議官通達が各部局長官に発せされたからです。

 その第3項には

「従前の規定が廃止となり、新しい規定ができていないものは、従前の例に準じて事務を処理すること」

 とありました。しかし依命通牒は官報には載りませんから、一般の目に触れることはありませんでした(注。第3章第1節に依命通牒の起案書および全文を掲載してあります)。


以上、斎藤吉久『検証「女性宮家」論議』(iBooks)から抜粋。一部に加筆修正があります


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