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安倍「一強」政権の「暗転」がもたらす皇室と靖国の未来──中西輝政先生の分析を読んで [天皇・皇室]


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安倍「一強」政権の「暗転」がもたらす皇室と靖国の未来──中西輝政先生の分析を読んで
(令和2年9月17日)
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中西輝政京大名誉教授が、安倍「一強」政権がいつ「暗転」したのかについて文春オンラインに書いておられるのを読んで、我が意を得たりと強く納得しました。〈https://bunshun.jp/articles/-/40236


▽1 妥協で見失われた大義

中西先生によれば、歴代最長の長期政権をもたらした理由は官僚を強力に支配するシステムを構築したことなどで、その結果、安定政権が成立し、外交政策の安定などが得られましたが、反面、周辺環境への対応から「妥協」が多く図られました。

とくに2015年に安全保障関連法案を可決させるために払った「妥協」の犠牲は大きく、これが安倍政権「暗転」の分岐点となった、と中西先生は分析しています。

つまり、政権の第一の目標は憲法改正だったはずだったのに、解釈変更という手段で対応したため改憲の大義が薄弱になり、道を閉ざす結果になった。この代償は大きく、政権の大方針が見失われていったというのです。

同じ年の「戦後70年談話」も妥協の産物で、村山談話、小泉談話の踏襲でした。侵略戦争史観を安倍政権は固定化したのです。そして政権は迷走し始め、行き当たりばったりの政権運営に陥っていったのでした。

さすが中西先生ならではの的確な分析といえますが、引用はこのぐらいにします。

先生のエッセイを読んで気がつくのは、現実的妥協が優って、本質的改革の機会が失われたのは、先生が例示した外交問題などのほかに、いわゆる靖国神社問題や皇室問題も同じなのだろうということです。


▽2 首相の靖国参拝も御代替わりの無惨も

保守派の悲願とされる公人としての首相参拝が実現するどころか、首相参拝=私的行為論が定着しています。そして安倍総理は大真榊を私的に奉納することで、現実的妥協を図りました。靖国神社が国家的追悼施設に戻るなど夢のまた夢です。いうまでもなく、その本質は憲法の政教分離問題です。

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令和の御代替わりも無惨でした。過去にない「退位の礼」が創作され、譲位と践祚は分離され、それどころか「譲位」は法的に認められませんでした。代始改元は退位記念改元に変質し、大嘗宮は角柱、板葺にされました。それでも現実に大嘗祭が遂行できたと保守派は喜ぶべきなのかどうか。

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目下の問題は皇位継承です。政府・宮内庁は平成8年以降、女性天皇はまだしも、歴史にない女系継承容認=「女性宮家」創設へと舵を切っています。

前提となるのは、日本国憲法であり、現行憲法に基づく象徴天皇制です。もはや憲法改正はされず、できず、国民の多くは象徴天皇制を支持しているということだとすれば、「愛子さま」天皇の実現もあり得ることになります。


▽3 保守派は本質的議論を

中西先生が指摘された安倍政権の分岐点が日本の歴史の分岐点とならないことを心から願うばかりです。そのためには保守派こそ、現実的妥協に安住せず、本質的な議論をあらためて喚起し、深めていかなければなりません。

なぜなら、安倍政権の「妥協」の原因は、本質論を回避している保守派の人材不足にあると強く思うからです。

靖国参拝=私的行為論も宮中祭祀=私的行為論も、ほかならぬ保守派の憲法学者らが、本質論を抜きにして、現実的妥協から主張していることです。官僚、ジャーナリストは言うに及ばずでしょう。

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